作家 西村賢太/山人
 
おいての表現は見事であった。粗野ではあるが、エネルギッシュで若さと馬鹿さが噴出し、しかしまたそれが意気消沈し、吐き出された汚物のような、名もない生命体になってしまう主人公の生きるという美しさを表現しているのである。そしてなによりも緻密だ。
 
 話は少し逸脱するが、赤字ローカル線の無人駅の除雪作業員常用となり、今年で三年目の冬であるが、過去二年は読書三昧だった。難しめの本や、娯楽性の物、多々読んだ。好きな小説家にどっぷりと嵌り、徹夜で読み耽るということも多々あったのだが、基本読書家ではなかった。本とともに埋もれたいという、我が友人のような生き方は無理だろう。
 今年は読書にあまりこだわらず、
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