作家 西村賢太/山人
は話したくないことを平然と描き、自らの恥部や性癖を惜しげもなくさらし続ける様は、見ていて吐き気を催す読者も多いと思う。しかし逆に、そこに人間の生を感じ、生き物が本来あるべき姿を抽出しているという部分も散見する。
「苦役列車」は、もしかすると途中までしか読んでいなかった…ような記憶がある。理由は筆致が気持ち良くなかったのだ。芥川賞受賞という、なにか文学的なにおいをイメージしていたのだが、粗野な文体とリズムが無いといったような、どことなくガキボキした印象だったからである。年号を見ると「苦役列車」は二〇一〇年。最近読んだ「やまいだれの歌」は芥川賞受賞後の二〇一四年である。この「やまいだれの歌」におい
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