青空とレモネード?/朧月夜
 
いう案もあったが、君がどの絵を出品することに決めていたのかは、彼女にも分からなかった。だから、そうした話は自然消滅してしまった。

 病院では面会謝絶が続いていた。というより、君自身が自分が誰なのか、周りの人間が誰なのかが分からなかった。入院患者を病室に見舞う際には、家族だけが入室を許される。君の両親はすでに君の病室を訪れたらしかったが、君は無反応だった。君からは、「君」というすべてが失われているようだった。

 僕自身は、と言えば、自分の仕事に忙しかった。君を見舞ってあげたい、という気持ちがないわけではない。しかし、病室から出て来られない以上、病院を訪ねて行っても無駄だと思えた。看護師に
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