りゅうのなみだ/はるな
言い方なのか、年代を経て生まれたのかどちらだろう。りゅうのなみだ、りゅうのなみだ、あっこれは小さいからりゅうのよだれだね。
人の顏を覚えるよりも、どこになにが生えているのかを覚えているほうが重要、いつも行く婦人科の入り口には嘘の木が立っていて(でもたぶんひんぱんに拭き掃除されていて悪くみえない)、精神科の入り口には妙に生育の良いポトス、診察室には抱えるくらいのがじゅまるの鉢、眼科には植物はなにもない。週に2回出社する仕事の部屋にも嘘のグリーンのアレンジ。ガラスで区切られた「会議室」にはプリザーブドフラワーでつくられた悲しいピンク色のものもある。オフィスはりゅうのなみだはひと粒も落ちてない。これか
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)