Lの昇天?/朧月夜
ずんていることも。時折誰かの肩や手が彼女の肩や手に触れていくことも。気がかりなことは何もない。……そう、何もなかった。
<哀れなるかな、イカルスが幾人も来ては落っこちる。>
Lは、昔読んだそんな文章を思い出していた。何に出て来た言葉だったっけ――と、Lは考える。そうだ、「Kの昇天」という小説だった。Lは思い出す。内容はあまり覚えていない。たしか、誰かが入水自殺をし、その観察者が主人公(?)は天に向かって昇っていってしまったのだ、と思う話だった。
それも、今のLには関係がない。ただ、空から落ちてくる雪がイカロスの羽根の欠片のように思えていた。
いつまでもそうしていたかっ
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