沈黙と言葉/ワタナbシンゴ
 
も おそらく
そのひだりでもない
無防備の空がついに撓たわみ
正午の弓となる位置で
君は呼吸し
かつ挨拶せよ
君の位置からの それが
最もすぐれた姿勢である

(石原吉郎『サンチョ・パンサの帰郷』「位置」)



ぎりぎりの場所で詩として成り立つ緊張感は、権力によって微動だにすることを禁じられた個の肉体と、その緊縛のなかですら生き永らえようとする生の残酷さだ。時代を越えてその情況が差し迫ってくる。石原が体験したこの詩の重みに、今も同じことを繰り返している事実に気づく。そして告発ではなく、詩の沈黙として石原は抗った。



沈黙は詩へわたす
橋のながさだ
そのの
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