メモ1/由比良 倖
 
っくり返したみたいな、とろりとした浅葱色だったり。九寨溝というチベット近くの、青っぽい虹をガラスにして張ったような湖を、昔テレビで見て、ずっと印象に残っている。あまりに説得力のある美しさは、まるで幻想のようで、生きることに沈黙を強いられるよう。あとはアリゾナにある、砂の夢みたいなアンテロープキャニオンだとか。

 秋の初めの風の匂いには、微かにひんやりとした成分が混じっているけれど、昼間、日の射す二階の僕の部屋は、まだまだ暑くて、朝や夜には薄い夏用ニットか、生成りのカーディガンを羽織っているけれど、真っ昼間の一番暖かい時間帯には、袖をまくり上げるか、Tシャツ一枚で過ごしている。
 空は一点の
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