メモ1/由比良 倖
 
中の言葉の種を、社交辞令的な苛立ち抜きで、出来うる限り咲かせたいと思う。感傷的な音楽を聴きながら。
 いくつか、書きたいような、批評的なこともある。あるにはあるけれど、夜の静けさには、微かな色合いと意味合いがあって、批評は僕をざらざらした現実感に連れ戻してしまう。それはただの比喩よりずっと色濃くて、例えば中国大陸から飛散してきた黄砂が僕の呼吸を邪魔するように、批評的な文章は、僕の疲労の度合いを深め、全身の筋繊維を強張らせてしまう。

 いろいろな声音が僕の中にはあって、それは心が沈黙しているときでさえ、僕を脅かすこともあれば、沈黙の冷たさや、優しい手ざわりで、僕を乾いた外界から守ってくれるこ
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