小さなメモ/由比良 倖
欠けたままの大人。川の音がしていて、僕の空っぽの心臓を通り抜けていく。昨日はヴァイオレット・エヴァーガーデンの劇場版を見て、泣きすぎて頭が痛くなった。今日はまた無職転生を見て泣いていた。
別に好きじゃない女の子がトイレで吐いて、僕がひとりで掃除したこと。ブラシで床をこすりながら、「このことは後になっても、ずっと覚えているんだろうな」と感じたこと。
アニメで泣いても、そのことはあまり覚えていない。僕は笑っている人たちの中では笑っているし、人が泣いてると泣きたくなるし、誰かが怒っているともっと怒らせたくなる。何も感じない。
全てが混ざり合って、虚空の中に吸い込まれていく感覚。誰といても
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