枳の花──ユウコのために/中田満帆
滝廉太郎の「憾」をバックにして読んだ、
ジャズ・バー「♪」の宣伝もやった
だれかが笑った
でもきみはふりむいてくれなかった
そのままやがて卒業になって
なにもかもが溶暗していくなか、
たったひとりでぼくは苦い風土に耐えながら、
きみのことばかり考えていたのだから
いまならいえるよ、
きみのことが好きだったって
でもきみがどこでどうしてるのかもわからない
チエミとは卒業後にいちどだけ会った
歩道橋のうえで
そのころぼくはひどく太ってしまい、
それをかの女に指摘されて
うろたえながら雨のなかを歩き、
やがて夜の神聖さに躓いて、
な
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