枳の花──ユウコのために/中田満帆
 
 なにもかもがまったく、
 くだらないと嘯きながら、
 きみに会えないのを呪った
 1年まえ、ぼくは三田にいった
 先輩のやってる喫茶店にいったけど、
 もう店は閉じていた
 もしかしたらきみの消息がわかるかも知れないって
 おもったんだけど、だめだった
 できたら今年の冬、もういちど挑んでみるさ
 襟をゆらしながらきみの町までバスに乗って、たったいちどでいいからきみに告げたい
 あまねくものが過去形を執っても、ぼくはここでそのときを待っている
 さよなら、ユウコ
 いつか会えたらいい
 さよなら、かつてのぼくよ
 いつまでもそこに立っているがいいさ
 枳の花のなかで拡散していくおもい、すべて解き明かされるまえに、
 ぼく自身がすべてを解きほぐしてあげるから、待っていろ!

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