枳の花──ユウコのために/中田満帆
嬉しくてうれしくてしかたがなかったんだよ
眠り顔の熊の縫いぐるみ、
もはやきみは持っていないだろうけどね
生活体験発表できみが作文を読んだとき、
ぼくはべつの場所にいた
翌る日、きみの作文が読みたいってぼくはいったけれど、
きみはぜったいに読ませないって笑いながらかぶりをふった
とってもかわいかったよ
きみはどっかの制服を来て、
それを笑うぼくに膝蹴りをしたっけ
きみの仕草やふるまいがどれほどぼくを高ぶらせたかなんて、
とてもじゃないけど語ることはできない
卒業生を送る会でだった、
ぼくは山田先生のお膳立てで、
「魔王」を読んだ、
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