枳の花──ユウコのために/中田満帆
 

 字、
 きれいだねとチエミがいい、
 もうわるいことしたらだめだよって
 ユウコはいったんだ
 でもぼくはやめられずに
 落第してしまった
 長い羞恥のなか、
 きみはいった、
 ナカタくん、さっき坂道歩いてたねと笑う
 ぼくらはまた話すようになった
 ある夜、三田ボウルの地階にあった、
 古買屋でベン・フォールズ・ファイブを見ていたら、
 きみが話しかけてくれた
 仕事なら紹介するって
 いわれたけれど、
 きみの評判を穢すかも知れないって、
 けっきょく頼まなかった
 修学旅行でディズニーランドへいったとき、
 きみにせがまれて縫いぐるみを買った

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