枳の花──ユウコのために/中田満帆
 
や、
 あのヴェトナムでのカーツ大佐のように耐えていた
 きっと核戦争はとうに過ぎ去って
 残されたのは桔梗の花
 当惑と錯誤のなかで
 きみの存在だけがぼくのなかでずっと大きくなりつづけていた
 あるときはバスケットの試合でぼくはなにもかも放棄して
 体育館に突っ立っていた
 きみはぼくをからかったね
 すごく怒りに燃えた
 でも、
 ぼくはきみを憎むことなんかできなかった
 ずっと忘れていた、とても大きな感情が
 ぼくのなかで拮抗し始めたんだ
 あるときぼくは知った、きみがフリースクール出身だって、
 きみもぼくとおなじく虐めを受けていたって
 きみは10年も年
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