枳の花──ユウコのために/中田満帆
ユウコ、かつてのぼくはきみが好きだった
ぼくがきみを好きになったのはたぶんきみの気怠さやつらそうなまなざしがぼくの、
ぼくの琴線に触れてやまなかったからだと有馬高等学校定時制課程の教室を懐いださせる
緑色の上着に白いシャツが眩しいきみのうつむきが情報処理室の机に見えるとき
ぼくはずっときみをうしろから見ていたんだもの、それは当然のことさ
いまならもっと素直になれたものを
それは鰥夫の悲しさゆえの過ちにすぎないのか
不良たちにからまれ、やくざの情婦に脅迫されながらも、
ぼくは懸命するぎるほど学校生活に耐えていた
ボルネアの奥地に佇むカーゴ・カルトや、
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