むすびめほとけて/武下愛
 
あって、ガラスではないのかもしれない。月明かりの中で明滅するガラスに私は名前を付けることをやめた。その代わりに奏でたメロディを送ると。ガラスから凛とした音が聞こえる。その音が散らばっては消えていく。その合間に、私はガラスの名前を考えていた。星音海(ガラス)と呼ぶ事にしたのであった。星音海と語らっていると淡い色立ちばかりが身についていくのだけど。原色ばかりを身にまとった私には少し物足りなく感じていた。重なる月日がその淡さを濃く際立たせて、段々と色付く世界の中で。星音海からして私が何だったのか。良く分からずにいる。結ぶということが縛るということをしってるから。星音海は約束を嫌った。私は嫌っている
[次のページ]
戻る   Point(2)