むすびめほとけて/武下愛
いるとわかっていたので、口にする事はなかった。内側にため込んだむすび目が意味を成す。行動に表れて。星音海を欠けさせてしまったのだ。その傷口に触れて。痛みと共に流血して、これがむずび目を付けてしまう事だと、私は星音海から学んだ。欠けた部分が丸みを帯びるように怪我をしても何度も撫でた。その都度星音海は違う所が割れていたのだと、私は数年経って知っていった。ひび割れた星音海に私が掛けた言葉はただ一言。
「星音海が星音海を縛っているじゃない。縛らないという事を縛っているじゃない」
星音海が離れて消えてくと思ってた。でもぽろぽろと流れた言葉は。いまだに残ってる。誰かに教える気はないけど。それでも交わした言葉達が息を吹き返すように。それ以上になって星音海は世界に彩を加えている。傷だらけの自分はむすび目を解く方法を知らずに。様々な出会いを果たしていくんだろうと。旅たちの時を見守って。その背が一閃の太陽が訪れるころ、星音海は違う所へ行ってしまった。固く結ぶのは自身の事だけでいいんだよって言えずに。居たけれど。いつか自分で気づくと思ってる。って繊細な星音海という、むすびめほとけて。
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