金魚すくわれ/からふ
れていたからだ。
煙草に火をつけて、ゆっくりと息を吐く。紫色の煙はミス・ブランチの水槽ま
で、いつまでも届かない。綺麗に、綺麗に、窓の外で雲に溶けていく。
五件目、空白。少しだけ風が吹いた。
六件目、いきなり大声がスピーカーから発せられ、音割れをさせている。親父
の説教だ。とりあえず俺に言っても仕方のない事だというのは分かる。それで
もミス・ブランチはゆうゆうと泳ぐ。赤とも銀とも言えない混じった鱗をひね
らせて、波紋を作る。俺は蛇口を捻って、わけもなく手を洗う。
七件目、「おめでとう!」とか「ありがとう!」とか、いろんな声が聞こえる。
すごく嬉
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