羊の話1/由比良 倖
のお酒を注文してしまいました。
すぐにお酒が運ばれてきて、羊さんがもじもじしていると、
「これは俺の奢りさ。さあ飲めよ」
と職業羊さんは言いました。言われてみると、迷うことは何一つない気がしてきて、羊さんは、
「ありがとう……」
と言ったあと、何かを誤魔化すみたいにお酒を一気に半分くらい飲み下しました。職業羊さんは、はっは、と笑い、羊さんは何だか楽しいような気がしてきて、何だか身体まで楽になってきて、お酒もとても美味しく思えてきました。
「ああ、今日あなたのようなひとに会えて僕は幸運ですよ。本当に、まさに恩人ですよ、あなたは。これなら街でも生きていけそうです。あなたにはお礼がしたい。い
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