羊の話1/由比良 倖
冗談だとごまかすのも変な気がしたので、律儀に窓の方を見て、そして夕焼けに照らされた街や道路を見ました。見ていると夕焼けも街も道路も、何だか綺麗なような気がしてきて、
「そう言えばそうかも知れません。僕は何だか疲れてしまって、風景までも疲れさせてしまったんです、きっと」
職業羊は、くっくと笑って、「君はひょっとしたら詩人かい? 詩人はつとまらんぜ」と言って、羊さんとは反対側の手で持ったお酒のグラスを飲み干しました。
「どうだい? 働いたあとの草は美味しいだろう? なんて、君はいかにもまずそうに食べるものだ。それとも酒かい? そうか。それがいい」
そう言うと、羊さんが断る隙も与えずに二人分のお
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