羊の話1/由比良 倖
 
うに言いました。しかし羊さんは「罰金」という言葉や法律の言葉は知っていましたが、それが何を意味するのかまでは知らなかったのです。
「とにかく君は働かなくてはならない。草地から出なさい。今から羊仕事に就いてもらう」
と言って、羊さんを部下に命じて、街まで連れてこさせることにしました。「手錠を持ってくればよかった」と権力羊は街に向かう自動車の中で考えました。手錠を持ってくれば、羊さんに手錠を見せながら「手錠は勘弁してやる」と言うことも出来た。と考えて、すぐに、それも卑劣な考えだなあ、やっぱり持ってこなくてよかった、と思いました。車の中では眠ろうと思っていたのに、眠れずに、権力羊は自分の羊部屋の間取
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