鹿くん/はるな
人混みでも、暑くても、構わずに繋ぐ、身長よりもっと大きい手のひらをしている。
会っても会わなくても同じだと思う。最初にみたときからわかった。夫と知り合ったときもそうだったし、そのあとに好きになって、のちに会わなくなった人ともそうだった。チョコレートを飲んで、公園を一周した。それで充分わかったと思ったからそのときは帰った。それからもうしばらく経つけれども、いまだにあの公園に置いてきたものがある。
堀の周りを歩いたのだった。蓮の葉がきれいに水をはじくのを見た。花曇りの日で、娘を産んだ日を少しおもいだした。色色な気持が思い出された。帰った方が良いとわかったから、半周したところでもう帰ります、と宣
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