常磐未来/あらい
題 折に触れて
膨張した沈黙 指と指でぬぐわせる
「びりびりさせやがる」
母はでこぼこみちを踏み固めながら 本線へと帰ってきたのだ。ハイウェイから抜け道を慕って、残響が喧騒を持ち込み 宵闇が迫る 声を揃えた前奏曲が響き渡っていく。敷石の決まった数 かっこ悪いものだと強調し 轍に沿ってヒトが流れていくのを あぜ道を切り取り床に並べ 天を射して青あざが見られたもの、
晩夏、か――
逃げ腰に伝染る 生まれ育った街
計り知れなく 壊滅した街
哀愁を含んだ瞳は 黙っていたが鋏をふりあげる、置き換えられた生魚を狙うように。それら 目をやれば淡水に潜む煉獄は気色悪く
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