女學生日記について/TAT
 
込んであったのです)。
今では本人さんは既に鬼籍に入られました。
加えて、これは書こうか迷いましたが、決して裕福で幸せな生涯ではなかったのかもしれません。

ある雨の日に、彼女の家財道具は冷たいコンテナに全て打ち棄てられていました。そしてその光景は、僕の心臓に冷たい爪を立てました。
おそらくは一生残る傷を。

この日記が書かれたのは昭和十四年。
第二次世界大戦の勃発した年です。
太平洋戦争が昭和十六年ですから彼女もほどなく戦争の大きな渦に巻き込まれていった事でしょう。

長い人生の間、彼女は時にはこの日記の中にいる戦争前夜の自分の姿を読み返したでしょうか。女學生だった頃の自分
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