完備 第二詩集『mirage』/完備 ver.2
 
らない沼の
位相 その淵で
粗くなるかれはふぶき
さくらの木の固さ
ついに訪れない
ゆたかな老後に鳴る笛
あるいは野
祈りを祈ること 叫んで
その場所を賛歌にする
遠くかれを
間違えないためだけの
眼鏡を外すけれど
ぼくの近眼はモネと
同じ世界を見ない




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読めない川の碑
すぐそばの息遣いが
淀むところで光る
黴か苔か
泡だらけの手で
風も抜けない工事中の旧居に
永遠と漢字で書く

屋上のあかるさに耐えかね
浮かぶ竹箸に
洗剤のにおいが移る
静かな怒号 春に
拾った炊飯器で飯を炊く

冷え切った爪先で
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