浄罪、いいや 冠水。/あらい
花束を拵えたまま
駆け上がることが
難しくもなく
恥ずべきことでもなく
靴紐が解けただけだよと
〈冠水の命日 置き去りにした一頁〉
積荷を降ろしたあと 焼失した夜光虫の
金色が 今を今を浮遊しつくす
/くぐもった声で
/濡れそぼった顔で
/火照った躰で
ふらふらと溢れ出るばかりの 無法地帯の雨が
ほんの刹那を台無しにしたけれど
水車は他意のない 異音を発してはいた
終わりを嘆いた。漂着した小さなひとみだ
ちいさく震えたけれど背負い切れるわけでもない
砂の器だ
幾多の山々を越えた少しの荷物が、更フけ
少しずつ輝きを喪っていく
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