読むことのスリル──ひだかたけし小論(9)/朧月夜
 
出において、その詩想を言い切っていたはずなのです。ですが、なぜ詩人はこれほどまでに言葉と格闘するのでしょうか?
 ここに、第一章で引き合いに出した、画家ドガのような姿勢があります。詩人はすなわち、誰に顧みられることがなくなったとしても、詩を書き続けるだろう、と。わたしが、氏を「生まれながらの詩人」であると評する所以です。詩人は、詩を「書きたくて」書いているのでしょうか? 詩を「書かざるを得ずに」書いているのでしょうか? 第五章で引用した「夏の後ろ背を蹴る」にもあるように、氏の詩は自己充足感のために書かれた詩ではないようです。では、いかなる理由によって、何を目的として詩人は詩を書くのか?
 それ
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