読むことのスリル──ひだかたけし小論(8)/朧月夜
 
いのです。この詩の最後に、詩人はこう言います。
 
  金木犀の香が舞う夕べ、
  時はすっかり透き通り
  遠い記憶の残響を聴く

 ここに表されているのは、「只ぼうと(改訂)」の最後にあったような受動ではなく、能動です。詩人は歩き出そうとするのです、凛として。
 詩とは、読者に対して感興をもたらすものです。「詩とは何か?」と問うことは、「卵が先か、鶏が先か」という古来からのテーゼにも通じるものです。「詩を書くから詩人なのか? 詩として認められたから詩人なのか?」と。しかし、これは無意味な問いです。どんなに優れた詩人の作においても、そこには駄作があり、失敗作があるからです。詩は小説
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