読むことのスリル──ひだかたけし小論(8)/朧月夜
途上に、「)何があったか/細かいことは忘れちまったが」という一文があるためです。「只ぼうと(改訂)」という詩に反省はありませんでしたが、直後に書かれたこの詩では、自嘲に近い反省が見られるのです。
人が物事を忘れる、しかも大切なことを忘れることは至難の業です。この詩人においても、人生の失敗談、あるいは不幸はあると思われるのですが、詩人はわずかにその片鱗を見せるだけです。ストイックなこの詩人にとって、自己弁護ほど遠い表現はないのです。詩人はあくまでも、「自我との格闘」に己の答えを見出そうとする、それは「宿命」と言っても良いものでしょう。ひだかたけしという詩人は、決して己の置かれた環境に妥協しないの
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