読むことのスリル──ひだかたけし小論(8)/朧月夜
、完成度の高い作品に「残響」(*3)という詩があります。「只ぼうと(改訂)」と同じく、2019年10月の作品です。その書き出しは、こういうものです。
樹間から
覗く秋晴れの青、
ふるふる震え
金木犀の香が舞う夕べ、
時はすっかり透き通り
遠い記憶を辿りいく
「只ぼうと(改訂)」に次いで書かれた詩らしく、その形式は似通っています。最初は叙景で始まり、最後は「時はすっかり透き通り/遠い記憶の残響を聴く」という叙志で終わります。詩人はこのとき、単なる惰性に任せたのでしょうか? それを肯定することは可ですが、わたしはここに詩人の進歩を見たいです。この詩の途上
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