読むことのスリル──ひだかたけし小論(8)/朧月夜
ています。この詩のなかで、「時間」は静止しています。対峙=自己とは何者であるのか? という問いが正面から問い直されているのです。
「只ぼうと眺めている」という最後の一文によって、読者は最初の一連に立ち返らざるを得なくなります。この一連のみで詩が終わっていたら、この詩は叙景詩、あるいは風景に仮託された抒情詩になるでしょう。氏の詩は、その一連々々が巧みであり、完成されているのです。もしも忍耐力のない詩人であれば、満足感とともにここで詩を終わらせてしまったことでしょう。そしてこの生来の詩人は、風景を自我と一体化させるために、その後の文章を紡いでゆく。己が感性と、世界とを合一させるまで。
同じく、完
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(4)