読むことのスリル──ひだかたけし小論(8)/朧月夜
己が主観を見極めようとする。いわば、自己の反省としての世界との格闘です。作者は、自らの認識すらをも疑う。認識とは、脳が提示するひとつのイメージであるからです。主観は、その認識よりもさらに深い場所にある。サルトルの言うところの「対自」です。
サルトルは、その初期の論文において、「対自は無限の彼方にある」と言いました。人間=認識の根源は、時間や空間を超えた彼方にあらねばならず、人の認識とは、「対自」から「現世」へと映された写像にすぎません。ここで実存主義を持ち出すことは批評の弱点(それも、いささか古い議論)ではありますが、この詩にはサルトルの初期の主張のような、切断された時間というものが表されてい
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