読むことのスリル──ひだかたけし小論(8)/朧月夜
 
の概念は「万葉集」の時代からあったものだとも、されています。わたしは古典の研究者ではありませんから、「わび・さび」に関する詳細な説明は省きますが、「時間」という概念は、平安末期の歌人である西行の歌によく現れているように思います。
 
  すぎてゆく羽風なつかし鶯よなづさひけりな梅の立枝に

 どうでしょう? 手元に詳細な資料がないことがもどかしいのですが、読者はここに「時間」というものを感じないでしょうか……。それは何も、この歌の冒頭に「すぎてゆく」という「時間」に関わる言葉が現れてくるから、ではありません。この歌のなかでは、過去の情景と現在の情景とが一体となっているのです。あるいは、なぜ
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