読むことのスリル──ひだかたけし小論(8)/朧月夜
で挙げた「〈根源悪〉の原体験/異邦の恐怖」ともに、その初出は2016年のことです。氏が、「〈根源悪〉の原体験」という詩に対してさまざまな試行錯誤を繰り返したことは、第六章でも書きましたが、作者が作品に対していかに愛着(*4)を持っていたとしても、作品とはその原点を超え得ないものです。わたしは、「只ぼうと(改訂)」「残響」のほうを、「〈根源悪〉の原体験」という作品よりも先に読みました。ですから、そこに氏に関する詩体験のオリジンがあります。
そもそも、日本の詩歌は「時間」というものに重きを置いてきました。平安時代に確立された「わび・さび」というのが、それです。……Wikipediaによれば、この概
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