読むことのスリル──ひだかたけし小論(4)/朧月夜
 
葉へと変化したように、わたしたちは「今現在」の語彙においてしか、言葉というものを判断できないものです。このことを論理的に証明するためには、クワインやクリプキのような哲学者の登場を待たなければなりませんでした。
 クワインやクリプキは、ソシュールの言語学を受け継いだ、アメリカ哲学の代表的な論客ですが、その論をここで仔細に展開することは止めておきましょう。ただ、その主張によれば、「言葉というのは、固有名詞ですら、その典拠というものを求めることは不可能である。言語は経験的にしか把握され得ないものである」という証明が得られています。わたしが「コレスポンデンス(交感)」という言葉を使いたいのは、単なる慣れ
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(2)