読むことのスリル──ひだかたけし小論(3)/朧月夜
 
でしょうか?
 昭和初期の作家である梶井基次郎は、かつてこう言いました「強いられているのは永遠の退屈だ」と。この引用は、作者の文章を正確に引用したものだと、記憶しています。昭和初期の作家の根底にあったのは、モラトリアムだ、ということを証左するような文章です。たしかに、梶井基次郎は肺病を患って以降、温泉地である湯ヶ島において、閑寂な日々を過ごしました。しかし、そのような退屈とは、このひだかたけしという詩人の想念とは異なっているような気がします。
「どてら姿のおじいさん」というのも、現在においてあるべき情景描写からは離れているような気がします。これは、果たして詩人の手による写実でしょうか、あるいは
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