読むことのスリル──ひだかたけし小論(3)/朧月夜
 
翔していきます。良い芸術とは、その鑑賞者そのものを離脱させるものである、ということがその根本にはあります。ビートルズという音楽を愛しつつ、この作者はビートルズを離れてもいるのです。
 ですが、この章の主張は「詩人の世俗性」ということでした。ですので、もう一篇の詩を引用しましょう。2022年1月に紡がれた、「み空のうた」(*2)という詩の一節です。
 
  ハロー、ハロー
  青い旗が揺れている
  燦々と降り注ぐ光のなか
  どてら姿のおじいさんが過ぎ
  わたしはイートインでコーヒーを啜る
  長閑な午後の一時です

 イートインは、この数年メジャーになってきた、商業の形態で
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