ヒスグラの同人誌/こんにちは!みんです
 
なさそうに「あれはね、描きながら泣いてたよ。正直」と応えた。言葉の意味を十分咀嚼する時間を与えられなくとも、それは当然だと直感した。美の教徒であるうちは創造主の立場にたどり着くはずがなかった。魔法のように見えた表現の数々は、彼の誠実な生き方に依拠したものだった。一方で私には、限られた人しか手にとらない同人誌に美を感じていることに対する”選ばれし者”的な優越感が少なからずあったのだ。私の一切の美的関心は、私の存在価値を守ろうとする心理的防衛反応に裏付けられていたようだ。彼は自分の全存在を賭けてあの同人誌を作ったのだと直ちに理解し、その感覚が初めから備わっていない自分の凡人ぶりに心底落胆した。


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