人間ではない。/岡部淳太郎
 
つめることだろう。それは明らかに人間ではない。舞台役者は舞台役者であって人間ではないし、詩人は詩人であって人間ではないのだ。だが、そう言ったとて人間であることから生じる様々な義務や葛藤や面倒事から免除されるわけでもない。特別なことをしていたとて、それも結局は世界の枠組みの中で成される他ないのだから、特別なことをする者であると同時に、やはり人間なのだ。つまり、詩人でありながら人間でもある。または、舞台役者でありながら人間でもある。そのような存在様式が課せられている。もっとも、その人間である部分は他の普通の人々よりもかなり薄められてはいるのだが、社会や世界や世間というものは詩人や舞台役者などという特別
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