人間ではない。/岡部淳太郎
 
うして僕は、馴染めない世界の中で詩を書く者として存在するようになった。
 だが、そうして詩を書くことで生きながら、僕の中にある奇妙な感覚は消えはしなかった。いや、詩を書くことがその奇妙な感覚への答合わせになってしまった感もあり、それゆえにか、その感覚は強まるばかりであった。幼い頃から感じていたもやもやしたものが明確になったために、それに自覚的になってしまったと言っていい。詩を書くことで「詩人」として存在するようにはなったが、「詩人」とはそれは「人間」とはまた違った存在様式のようにも思えた。何か人間のふりをして過ごしながら本当は詩人なんだと、周囲を騙しているような感覚にもなったのだ。谷川俊太郎の有
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