人間ではない。/岡部淳太郎
けだとともすれば自己憐憫の暗い方向に傾くことになりがちではあるが、「ただの人間ではない」という言い方だと、その後に「しかし」という留保をつけざるをえないだろう。「ただの人間ではない。しかし」という微妙な割り切れなさが残るのだ。この言い方の違いを考慮するならば、詩人だって普通の人間だということにはならないだろう。そのような言い方は、詩人(または先の舞台役者でもいい。そのような特別なことをしている存在)を普通の人間から引き離して高みに置くことで生じる傲慢な心理を警戒するという意図がこめられている。それは充分わかるのだが、詩人だって普通の人間だと言い切ってしまったら、特別なことをしている者ゆえの苦悩が充
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