人間ではない。/岡部淳太郎
が充分表現されていないという感じがしてしまうように思う。おまえも普通の人間だよと言ったところで、世界に対して異和を感じて馴染めないでいる者の気持ちが救われるわけではないのだ。そうすると大事なのはやはり「ただの人間ではない。しかし」というその先の部分だろう。この表現しきれないもやもやとした混沌。そこにこそ特別な何かをしている者の、「ただの人間ではない」者の、見えない可能性が含まれていると考えるべきだ。そこにはいくばくかの矜持もあれば多くの挫折や癒されない傷もあるだろう。問題は複雑で先送りにされたままであるだろうが、せめて世界に対して「でもな、あいつ詩が書けないんだぜ」と言えるような気持ちがあっていい。おそらくそのようなぼろぼろの誇りの中からしか、「ただの人間ではない」者のいまだ見えない未来は開けてこないだろうからだ。
(二〇一八年十二月)
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