汽水域/山犬切
した 最後に姉が自分の首に巻いていた深紅のマフラーを首にかけて携帯で写真を撮った あとでInstagramやTwitterにでもアップするのだろう ニット帽を被った姉は「帰ろっか」と言った
家に帰って床暖房のよく効いたオレンジ色の部屋で姉と一緒にジャックダニエルや白ワインを飲みながらとりとめのない話をしていると、姉は「そっか、彰ももう大学生かー」といい、電灯の下で冬の日射しのように力の弱い目元だけで笑った 大して酒の強くない姉は1時間ほどの飲酒でしたたかに酔い、リビングの黒い革張りのソファにどたり、と身体を投げ出すように横になった 「部屋まで運んで―」と明るく俺に要望したので、僕は肩を貸して姉の
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