どうか咲いていて/ホロウ・シカエルボク
、それをする気にはならなかった。ラジオのスイッチを入れている間に、花を枯らしてしまっては元も子もない。でもどんなに注意してもそれは枯れた。どうしてなんだ、あの花屋の娘は俺に嘘を教えたのか。俺はその娘を殺してやりたいくらい憎んだ。でもそれをするわけにはいかなかった。俺が部屋を出た瞬間に花が枯れてしまうかもしれない。俺は泣き、叫びながら花の世話を続けた。ドアのベルが鳴らされたような気がした。でも俺にはそれを開けることが出来なかった。二人の人間がドアの外からこちらへ呼びかけた。職場の社長と、大家らしかった。大丈夫です、と俺は必死で叫んだ。
「俺は大丈夫です、いまちょっと部屋を離れるわけにはいかないんで
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