どうか咲いていて/ホロウ・シカエルボク
 
んです、出直していただけないですか。」
でも二人は帰ってくれなかった。大家が合鍵でドアを開けて、二人が飛び込んできた。俺の様子を見て、酷く驚いた顔をした。そういえば、このところ食事もしていないような気がする。邪魔をしないでくれ、と俺は怒鳴った。
「この花を枯らすわけにはいかないんだっ!」
花、と、二人は口々に言い、俺の部屋を見渡した。
「事情は説明出来ない。俺にもどういうことかわからないんだ。とにかくこの花を枯らしちゃいけないんだ、お願いですから帰ってください。俺の邪魔をしないでください。」
俺はそう懇願したが、二人はおろおろするばかりだった。やがて大家が小さな声で、しかしはっきりとこう言った。

「花なんて…花なんてどこにあるの?」




                         【了】

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