秋のホーム/ホロウ・シカエルボク
 
んな思いつきは不思議なくらいしっくりきた。私はスマートフォンを手に取り、認証画面を出して、自分の肩越しに背後を映してみた。お戯れのつもりだったけど、ロックは外れた。
(まいったな…。)
これ以上は駄目だ、このまま明日警察に届けるべきだ。心の声とは裏腹に私の指先は持ち主の情報をあれこれと探っていた。でも、何も知ることは出来なかった。情報がほとんど空になったスマホに、動画がひとつ入っているだけだった。誰も映っていないあの駅のホームのサムネイル。気になったのは動画の時間だった。十分近くあった。私はイヤフォンを挿して、それを再生した。まだ幼さの残る声が、どうして自分がそこで死のうと思ったのかということ
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