秋のホーム/ホロウ・シカエルボク
ことを、姿を見せないまま話していた。私はそれを見ながら不思議な思いにとらわれた。ひとりの人間が駅のホームで、こんなにはっきりとした声でこれから死ぬと話しているのに、時折通り過ぎる人たちはまったく関心を示さなかったのだろうか。なにかを撮影しているようだ、最近こういうの多いな―そんな感じだったのだろうか。私は最後まで動画を見て、それから、パソコンを開いてもう一度再生し、場面ごとに止めたり繰り返したりして彼の言葉を一字一句間違えずに書き写した。
『こんにちは。ええと…いいお天気ですね。よかったです。僕は今日、ここで、電車に飛び込んで死のうと思います。たぶん失敗しないで出来ると思います。僕は普段はぼ
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