はじめから手遅れ/ホロウ・シカエルボク
からそれは少し待ってくれ、と言った。わかりました、とぼくは答えて電話を切ろうとした、ごめんなさいね、と彼女の母親は言った、いえ、とぼくは答えて電話を切った。謝らなければいけないのは多分ぼくのほうなのだ。
ひと月が過ぎた。彼女の行方は依然として知れなかった、どこかで見かけたとか、実はわたしの家にずっと居るの、なんて話もまるでなかった。彼女はまるで荷物と一緒に完全にこの世界から消え失せたかのように思えた。警察にも顔を出してみたが、事件性が感じられない限り積極的に探してくれることはなさそうだった。子供ではないのだ。ぼくは仕事から帰るたびに空っぽの部屋を見てため息をついた。そして代り映えのしない食事
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