はじめから手遅れ/ホロウ・シカエルボク
 
のらしかった。ぼくは礼を言ってリビングに戻った。化粧水かなにかのようだった。一瞬、開けてみようかと考えたが、そんなことをしても彼女の居場所が書いてあるわけでもない。ひとまずそれは彼女が使っている化粧台の上に置いておいた。家を出て行こうというときに、ネットで買物などするだろうか?要するにこれは、彼女にとっても予期せぬ出来事だったということなのだろうか。ぼくは違う可能性について考えてみた。なにかしらの事件が起こった。誘拐や殺人。考えてみるだけでゾッとした。だけどすぐに、それは現実感がないと思った。家の中に荒らされた形跡は無いし、なにしろ彼女の持ち物があらかた無くなっているわけだから。それは自発的に行わ
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