深紅の繭が孕む熱が/ホロウ・シカエルボク
イデオロギーのせいなのだ、と俺は考えた、本能的なイデオロギー、というような意味だ―こんな言い方は正しくないような気がする、でも、他に適当な言葉が見当たりそうもない…人生というのは誕生と死を延々と繰り返す、どこかで細胞の入れ替わりを感じているのだろう、死は一度ではない、人間はひとつの人生の中で何度でも死ぬ、そして誕生する、その繰り返しが、いわば短い輪廻のようなものが、ただ命を持っただけの生きものを意味あるものに変えていくのだ、過去も未来も限定しない、矢継ぎ早のアップデートだ、人間を育てるものは、それをいかに自覚するのかという一点に他ならない、そんな話を一行も理解することなく、弛み切った身体を横たえて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)